短歌放流
鴉鳴き横でそ知らず熟す果樹いずれ腐れど種子は残ろう
項垂れど重い目蓋を開ければ無限に広がる白紙の未来
新月の呼吸に合わせ指を折る忍び寄る闇手招くように
秋の穹銀杏の雨にさらされて一滴混じるは楓の朱色
「愛してる」いつかそれすら零れ落ちその形相は鬼か仏か
ゆるゆると忍び寄る冬手を取り合い一緒に帰ろう陽が沈む場所
目に入る情報すべてが猛毒だこの目を射るは世の美しさ
最果ては光の彼方まだ遠く無理解の海泳ぎきれ
寂しさをいくつ呑み込み仰ぐれば君は遠のく海の果てまで
恋の種類が多すぎて目が眩むほら鮮やかに色鮮やかに
今までをサヨナラなんて言わせない僕は生涯恋を乞うから
アルコォルというガソリンいれろほら火花散らして生き急ぐため
「キスしてよ」言えないからさ煙草吸う君と同じの息が欲しくて
満作の儚き香に思い出す君のうなじを照らした春陽
「死」は美しいだからみな辿り着けない誰もが知ってて知らんぷり